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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

05 一九三八年(昭和十三年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页

青空文庫

きょうお墓詣りをして見たら、買い上げられた土地というのは、お墓へゆくあの細い畑の間の道の中程に、右手に入るうねった枝路があったでしょう? あのすこし先からだそうです。お墓のはるか手前からです。昔は綿が植えられ、やがて田になったこのところどころにはねつるべの井戸をもった畑も、間もなく高い塀にかこまれてしまうわけです。田の中をこいでもよいという条件で、農民たちは最後の田植の準備中です。牛をつかって黒い雨合羽に笠をかぶって一生懸命雨の中を働いて居ります。売価では、新しく元の面積はとても手に入らぬそうです。

奥の間の次に(六畳)月三円で小学校の十九歳の女教師が間がりをしています。大変に若くて、きのうは、この四月同期で卒業して就職した友達が来て、いろいろ可憐なお喋りをしていたかと思うと、すぐいかにも若い娘二人の眠っている寝息がきこえて来ました。やがて一人が大きい声で「手をあげて」とねごとを云いました。こちらの蚊帖の中で私は思わず破顔いたしました。すこし話の内容がちがうだけで、ひさと栄(うちの若い人たちよ)とがかたまっているのと似た感じで、何だか可愛いの。