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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

05 一九三八年(昭和十三年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页

青空文庫

七月十二日  第三十五信

島田からおしまいの手紙を書きます

十日にはお父様の三十五日が無事に終りました。八日の午後から徳山の岩本のおばさんがカヅ子という六つのお婆ちゃん子をつれて来られ、九日は夜の十一時頃までかかっていろいろの仕度をしました。十日は十時から式がはじまり、井村氏、山崎のおじさま、室積の河野とかいうところの細君、野原の母娘などで十二時頃式と御膳がすみ、お墓詣り寺詣りとすませ、夜すっかりひまになりました。

三十五日がすんで本当に安心いたしましたし肩の荷が下りたようです。いてようございました。昨日は、皆が骨休めのため虹ヶ浜で一日のんびりしました。松林の間に六畳ばかりの離れの形の掛茶屋が出来て、そこを一日一円から、かす。あなたが家をかりていらした、あの前あたりのところです。その時分には、そういう設備はなかったのですってね、この二三年来のことだそうです。そこへ行くとゴザと座布団をもって来る。お茶その他も出来るのだそうですがきのうはまだ備っていなかったので、通りの方の氷店からお茶やお菓子をとって、もって行ったお握りをたべ、十一時頃から七時すぎまで海風にふかれて、松の香を吸っていい心持、様々の思いで午後を過しました。