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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

05 一九三八年(昭和十三年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页

青空文庫

三四日前のむしあつかったこと、まるでジェラチンの膜の中に入っているように苦しかった。机の向きをかえて、エハガキに描かれているのとは正反対の方の窓に机を向けました。梧桐の繁った梢が窓の前にさし出ていて、薄い緑色のレースのカーテンが風に帆のようにふくらみます。

そちらは、いかがでしょう。暑さはこたえるでしょうね。おなかはどんな調子でしょうか。

昨年のことを思えば、今年はたすかりますけれども、なかなか気がかりです。どうか呉々もお大切に。食事の前に、薄い食塩水で、口をよくゆすぐ(うがいをする)という仕事をずっとやっていらっしゃいますか? この間、そちらからの本を見ていたら、そういうことが、腸の注意の条にありました。よんでいらっしゃることは必定ですが不図、忘れていらっしゃりはしまいかという気がした。特に大してわるくないときには。もし実行していらっしゃれば何よりですが、念のために。

こちらは、ひどく疲れが出たというのでもないが、暑いなかを用事で歩く日がつづいて、ヤレと落着こうとしたら、二十日の夜十時頃から、うちの栄さんが俄におなかが痛いと、うなって苦しみはじめ、その夜は二時頃まで医者さわぎをしました。