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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
けれども、客観的に在るところまでは、その線をはっきり自他ともに確保した上で、更により高い進展のために一層努力されるわけでしょう。こう書けば、そんなことはわかっているよとお笑いになるかもしれず、又、それがなければ土台出ない話だとユリの頓馬ぶりをお感じになるかもしれないと思う。けれども、お前もその一族という風に焦点をおいて云われると私は辛い。堪えがたいようなところがあるのです。
いつかよっぽど前の手紙に、ユリは毎年どこかへ行って暮したのだろうから云々とあったとき、生活の細部というものはわかり難いものだと思ったことがありました。私は二十歳位から折々家族と暮したが、何年も一緒に暮したことはなかった。この三・四年ぐらいちょいちょいすこし長く暮したことはなかった。
今度のことで、私がルーズな結果になったのは、親密さの余りというより、見きっていたところがあった。あっちの生活、自分の生活、その間に本当の血脈は通っていない、それをつよくつよく感じていたために、或意味での不親切があり、それが、自分の生活感情に或点での究明追求の放棄となって作用していたと思います。ルーズさを十分認めるとして、私にはそういうように思われている。