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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
ああいう話しは、私たちにとって欠かされないものだけれども、どうしても一定の時間がいります。単な言葉数でない時間がいります。同じ土台、同じ線の中で話していることは勿論わかっているのだけれども、互の気持がぴったりするところまでゆかないうちに中絶されて、どこかくいちがった感覚でのこされる。これは私にとって感覚的に大変苦しい。そちらもそうでしょう? あれも、これもわかっている、けれども……。そこで切れる。これは謂わば健康によくない状態です。考えてわかることでのこった話は、のこった影響がこんなに体じゅう苦しいようではない。わからせようという、一つの楽しみのようなものが含まれます。気分でくいちがう、或はぴったりしきらないのは迚も其那楽なものではない。あした顔を見てこの気持がほぐされるまで持ち越し、云って見れば、そのサスペンスの永さで実に苦しい。私にはこういう苦しさは肉体的に来て、殆ど堪え難うございます。
一言に云って、私たちは新しい事情にまだよく馴れず、その条件をつかいこなしていないと云えるのではないでしょうか。
急にあれもこれもとたたまり、一つのテーマについて、そのテーマの展開法では数倍の時間が必要な話しかたを、不可能な短時間のうちにしようとしているのではないでしょうか。