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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
血圧の高くないこともうれしい。私は痼疾と云っても肝臓や盲腸で、手当や日頃の注意で癒って来ているものばかりであるし、本当に安田さんにゆく迄はいやな不安な気持でした。私の背中に音がすると云ったのは順天堂の横田さんという医博でしたが、どうしたのでしょうね。もしその当時感染していたのなら、その注射の反応がこんなに弱小ではない筈ですもの。休火山になっているにしろ。全くわからない。気管支が鳴っていたのかしら。さもなければ、おどかしたのかしら。
本当にうれしい。よろこんで、有難がって、せっせと早寝をして疲れをぬいてしまいます。
それから、これは万一の場合のために今からかたくお願いしておきますが、私がもしそういう病気になっても、どうぞサナトリアムに入れることだけは、かんべんして下さい。普通の病院は、いろんな種類の病人がいる。経過もまちまち。生死もまちまち。だが、サナトリアムというところは、或危急をもちこす必要でもあるのでない限り、同種の病人だけいて、而も一種の雰囲気をもっていて、迚もやり切れるものでない。精神的に快癒がおくれる。そう感じます。二三のところを見てのことですが。