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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

05 一九三八年(昭和十三年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页

青空文庫

は短篇集として様々の感想をおこさせる作品集です。短篇というものについてもメリメと比較し、モウパッサンと比較し、チェホフに比べたりすると、例えばモウパッサンの「脂肪の塊」などとドウデエの短篇とでは、同じ時期の人生の断面を其々にとらえていても捉えかたがいかにもちがう。ドウデエの思い出に、原稿が一枚かけると、小さい男の児がそれをチョコチョコととなりの部屋にいるお母さんのところへ運ぶ(浄書に)光景があり、そんな風にものを書くということを昔私はびっくりして覚えています。深刻な矛盾の中に当人が楽しそうにしている姿というものは独特の見ものですね。この小さい男の児が、今はもういい爺さんでクロア・ド・フューの仲間で活躍しているのだから面白い。父ドウデエの作品がこのように一家の歴史のすすむ酵母を既に語っている、そこが又面白く思われる。

一緒に送りかえされて来た購求の書下し長篇小説の一冊を眺め、私は胸の中に迸る苦さを抑えかねました。その作者に好意をもつ義務を感じられない、そういう苦々しさです。

雨が上りかけて、空の西の方が光って来ました。それでも寒いこと。手が大層つめたくて、変な字になる。