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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

05 一九三八年(昭和十三年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页

青空文庫

男 青年が、花をやって徹夜して、荒れつかれた神経の反射で、我むしゃら頭からつっかかってゆくような面は描かれているが、妻である女が屈伏するモメントがわからぬ。子供時分二人で、意味は分らぬが、ある遊びをしたことなど作者はもち出しているが、リアルでない。そんな女としてでなく描かれているのに、天質のいいものをもつ女として描かれているのに、良人を愛しているのに、そこでそう脆いのが合点ゆかぬ(女として)

良人はそれを過ちとして、女の或場合の災難として、腕力的にかなわない災難として許す。

この点もどうもわからなかった。花の札を妻が間違えることにさえ、ずるいのかと心持わるくするのなら、こういう場合災難として見るしかなくたって、そのような災難を生じるサーカムスタンスをもつことにもっともっと苦しい思いをする筈だし、根本的に云って、そういう条件での災難と云い得るだろうか、原っぱで五人に囲まれた、そういうのでもないのに。どうも腹に入らぬ。

主人公は、これで自分たちが不幸にされては余り下らぬ、そう思い、ひっかかっている気分を直しに大山へ旅行して、そこで所謂自然の療法をうけ、やがてそれにこだわらぬ気持までひろがる。