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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
人間の心持の活々した面白さと思うが、野間清治が狭心症で急に亡くなった広告が夕刊に出たとき、おや野間が死んだね、と云って何となし笑うような気分が附随し、(十八日の夜で繁治さんのところにいたが)そこにい合わせた人が期せずして同じ気分を受けた。そしてかえって来たら、おひさ君が同じことを云ってやっぱり笑いがついて来た。同じ心持なのです。下らないようだが、人物が人々にいつしか与えている印象の総和的な表現だから、なかなか面白いものだと思う。人間に対する評価というものは、多くの場合こういう風に、はっきりした言葉や表現をとらないものとして(そういう表現を知らない人の心にも)たたまって行くのだから大したものですね。
そんな、花輪の一箇一箇が出来るだけ大仰に足を高々とつけて、それを機会として自家広告をしているような葬式を通りぬけて、かえってからよせ鍋の夕飯を五時すぎにすませ、七時には家を出て車で東京駅までゆきました。
Tちゃんのカンカン帽があって、それ一つだけがどこにも入らない。Tちゃんが目白へかえって来たとき、おや洗面器をもって来たのかしらと思って見た風呂敷包みの恰好そっくりのものを又小母さまがこしらえて、後生大事に膝にのせておかえりです。