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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

05 一九三八年(昭和十三年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页

青空文庫

それ見ろ、どうだ式では全く無くね。少しはましなのよ、そういう心持、すこしはよろこんでもほしい気持。そういう気持からでした。だから「何という水準だろう」という風に受けられていたことは苦しい気がしました。そして、それだから謙虚について書かれていたというに至っては。私は、栗氏のところへ電話をかけに出て、私の前を走って行くポチの姿を眺めながら、のろのろあの線路沿いの道(あすこはちっとも変って居りませんよ、あなたがよくお歩きになった頃の通り)を歩きながら考え、自分の気持の苦しさについても考え、ここには三つのことが錯綜していると感じました。一つは、こんな心持の行き交いにさえも作用する生活の事情ということ。他の一つは、私が、自分の心持から、そんなものまでを、とるに足る何かの評価であるかのようにとりあげたということにあらわれている客観的な、或は本当に評価というに足りる評価との区分の不分明さ。第三には、それが、愚であるとし、低いとしても、何故すらりと、あなたの感情に、よろこばせたさの心として映らなかったろうか、映らせない何が私のあなたへの心持に在ったろうか、そういう内省。