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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
自身の心を強くつよく貫いているよろこばせたい心持、安心させたい心持、自分が愛するものを我が宝と思っている、そのような心で自分をもうけとって欲しく望む心。これが、どのような源泉から出ているか。もとより愛からと云う答えは一般に通用するというより以上実体にふれている。確かに愛から。そして又対手の人生を高く評価していることから生じている。その評価への絶対の信頼によっている。けれども、そのよろこばせたさ、安心させたさが、確信され確保されている真の安心の上に悠々的に発露しているものか、それとも、例えば子供が一つ木にのぼると、勇んで下りて来て、母さん僕木へのぼったよ、と報告せずにはいられない、そういう種類のものか。なかなか興味ある心理だと思う。明かに、自分は愛情に加うるに一目をおいたものをもって対している。非常に一目おいている。それによって、どちらかと云えば極めて従順な心をもっている。しかし、生活の他の一部には、自分として、決して自信なくはない。狙撃的目標として悪く耐えて来ているとは思っていない。これが面白く作用して、大変おとなしく従順であるのに、あるところまで埋ると、何かがんばったようなものが出て来るのではないかと考える。