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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
ところで、冨美ちゃんは、室積の女学校へ入ったそうです。お祝に字引きをやりましょう。室積に通うということは、つまり元の野原の家に住みつづけるということでしょう。それなら体のためにも、気分の落付きにもよろしいでしょう。広島というせわしない町の、ごみごみした一隅へ急に移ってはどうかと思って居りました。あの子は肺門淋巴腺をやりましたから。
ひさの弟も中学をうけて、一・二番だったが落ちたそうです。それに姉がお嫁に行くので、そうなると、実家に手がなくて、かえらなければなりそうもない。それで、当人も大いに悲観している。こまったよゥと悄気ている。世の中つは思うようにならんもんだ、と。私の方も彼女より少く悲観しているのではないが、そうきまったら又仕方がないから誰かおひさ公にかわりを見つけて貰ってなどと考えて居ます。誰もいないでよければ一番単純なのだが。鼠とさし向いでは永もちがむずかしいから、そろそろ対策を考えましょう。
支那の文明批評家で林語堂という人がものを書いていたのを一寸よんだら、欧州の作家を引用して気焔をあげている中に、昔からの支那の椅子は威儀を正して見せるためであって、体をくつろがす目的でない。