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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
昨年の末から書いた現代文学の展望のつづきとそれ以後の作品の現実について。これは有益なことであるから必ずやるつもりです。
文学としての諸潮流のありよう、或はあらざる有様もその変遷もなかなか面白い。
昨夜一寸『婦人公論』を見たら、ラジウムのキューリー夫人の伝をその娘の一人が書いているのをよみました。キューリー夫人が、女としてどんな幸福な妻であったかということ、その豊富な夫妻の共感共働が貧窮の灰色をさえ光らせているのを見て、感じるところが実に深かった。世の中には見事な生涯を送る夫婦というものが、いろいろの形でどっさりあるでしょうが、キューリー夫妻は、その傑作であったと思う。今のある種の若い人々にこれをよませると、ともかくそれだけ熱中出来る目的があったのだから幸福ですわ、というでしょうね。目的のないこと、才能のないこと、それを自覚しているというのが賢さの一モードであるから。同じ『婦公』に出ていて面白く感じたことは、現代の若い婦人への注文でいろんな先輩が、誰でも云うことをそれぞれ部分的に云っているが、今日の若い人々のリアリズムが、生活上負けた形でのリアリズムであることを指して居るのが一人もなかった。