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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
お母さんとしては十五円はお出しになりたくないそうですから。私としてもその方が安心でよい。貴方もこの方法には賛成して下さるでしょう。そして、こちらの家計は、お店はやって行けることだし、負債は殆ど全くないのだし、銀行へ行っても大分丁寧な挨拶をお受けになるそうですから、決して心配はいりません。このことだけは安心してよい。話のときは、永年の生活の習慣から、他の半面ばかりを出す癖になって居られますが。二人の息子を戦争に出す母の心の苦しさは深いものであるから、どうやら暮しが根拠を保っているのが、せめてものことです。私たちとしても、何とかして力に及ぶことをするだけで、志を受けていただける範囲であるのは幸です。この十数年間の努力というものがどんなであったかとお察しいたす次第です。
お父さんは、ちっとも落胆もしておられません。あなたが六日にお出しになった電報は、昨十三日の午後につきました。いつぞやからお話しの、いつか払った六円若干の金の送り先は、もう覚えてはいらっしゃらないそうです。
広島という市は、戦争で次第に繁栄して来た都市です。独特な性格をもって居ります、その町の商人たちの気分が。