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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
牧野さんの本はお送りいたしましたが、スノウのも、私は大いによい妻としての心を発揮してあなたに先にお見せすることにして送りました。折角御注文のがないから、その代りに。十分その代りとなります。
十八日にはかえりに林町へよりました。久しぶりで太郎と遊び、国男にも会いました。このひとは、この間どっかの二階からころがり落ちて肋骨を痛め、名倉に通っていました。そしたら偶然糖尿になっていることを発見されて、すこし悄気ている。でも私はいいことだよいいことだよと云いました。すこしはそれでこわがって酒を減らせばいいのです。この前はもうすこしで片目つぶしそうな怪我をするし。
寿江子は熱川で山羊を飼っていると手紙が来ました。二十五日ごろ又一寸かえって来る由。
十九日は戸塚へ行っていろいろ話し、新宿のムーランルージュへつれられて行った。ここはいろいろ今日の社会相を笑いの中に反映していて面白かった。
鈴木さんのところへは明日行きます。そして万端相談いたしますから、どうぞそのおつもりで。
きょうは十時すこしすぎに、徐州陥落のサイレンが街じゅうに響きわたりました。達ちゃんの船はもう支那の近くにいるのでしょうが、どこにいるのかしら。