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ひきょうのにちりんき

秘境の日輪旗

蘭 郁二郎

「秘境の日輪旗」少年文庫、新正堂、1942(昭和17)年9月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 页

青空文庫

英夫と、祥子は王様と聞いて、びっくりした。

謙一の姿を見ると、庭先に立っていたマレー人が、にこにこしながら、駈け寄って来た。

「王様はいるかね?」

「はい、お待ちしていましたよ」

「客人は?」

「王様と庭を散歩しておいでです」

「子供さんたちも一緒だね?」

「はい、左様で……」

マレー語の、そんな会話の後で、

「ちょうどいい」

と、英夫たちをふりかえり、

「取次いでくれたまえ」

マレー人にいった。

「取次ぎなんか、いりませんよ、河井さん、お早う!」

小肥りの、血色のいい、年のころ五十近いマレー人がにこにこしながら大またに歩み寄って来た。サロンにシャツを着ただけの姿だった。

「サルタンだよ、昔のシンガポールの王様だ」

英夫と、祥子は、普通の人とちっとも変らない王様に二どびっくりした。

「やあ、お珍らしい、これが弟さん、そちらは園部さんの姪御さんでしょう。ようこそ、さあこちらへいらっしゃい」

祥子と英夫は、どうしたわけか、何もかも知りつくしているような、打ち解けた王様の態度を不審に思っている暇もなく、王様は、ずんずん三人を奥庭に案内して行った。

木立に囲まれたベンチのところまで来ると、陽にやけた、痩せた小柄の日本人と、二人のソンコ帽をかぶった小さい男の子が、熱心にこっちを見ながら立っていた。