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ひきょうのにちりんき

秘境の日輪旗

蘭 郁二郎

「秘境の日輪旗」少年文庫、新正堂、1942(昭和17)年9月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 页

青空文庫

表面に、唐草模様を彫り出し、赤や、青や、緑や、黄や、紫の色どりをした長さ三十センチ、幅十五センチほどの細長い小箱で、蓋をとりのけて見ると、赤く塗った箱の中に、レモン色の、羊のなめし革を折りたたんだものが入っていた。

「羊の革を使ってあるから南蛮かと思ったら、この模様が南蛮風でもなし、唐様でもなし天竺風でもないでしょう」

旦斎が、丁寧に、それをひろげるのを見て、骨董屋がいった。

「うむ、なるほど、これは面白い……買取ろう、価はなにほどだ?」

旦斎は、ひどく乗気になって、さっそく、買取ることにした。

羊の革の模様のように見えたのは、「古文」といって、古い時代の漢字だった。旦斎には一目でそれがわかったのだ。

「その園部旦斎という人が、つまり祥子さんの御先祖なんだよ」

謙一がひと息した。

「えっ! じゃあ、祥子さんの家に、その箱があったんですか?」

「うむ、だが、それを話す前に、まだいろいろな話がある……」

謙一はつづけた。

旦斎は、羊の革の文字を、一字一字翻訳してみて、前に話した、渤泥(ボルネオ)に渡ったひとびとのことがわかった。

旦斎は、それで満足せず、自分でじきじきに渤泥を探険するつもりで、その文書が、どうして日本に渡って来たか、どういう経路を通って骨董屋などの手に入ったか、いろいろ研究をつづけた。