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ひきょうのにちりんき

秘境の日輪旗

蘭 郁二郎

「秘境の日輪旗」少年文庫、新正堂、1942(昭和17)年9月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 页

青空文庫

「そうして下さい、兄さん」

「ばか、兄さんは一と晩や二た晩眠らなくたって疲れやせんよ、ぐずぐずしていると、みんなが疲れてしまうじゃないか!」

謙一に叱りつけられたので、英夫と祥子は、あすにそなえるため、出来るだけ眠っておくことにした。

天幕に入って、ふとクラパの寝床をのぞいて見ると、中は藻抜けのからだった。

「兄さん、クラパがいませんよ、どこへ行ったんでしょう!」

「まあ……、どこへ行ったんでしょうね、寝床の中がすっかり冷えきってるわ」

「ふむ……すると、かなり前に出て行ったわけだね」

「そうですわ、あたしたちが焚火のそばにいたのはかなり長かったようですもの!」

「そいつは、すこし困ったな」

謙一が天幕をのぞきこんで、じっと考えていた。

「まさか、逃げ出したんじゃあないでしょうね」

「あるいはそうかも知れんよ、あっはっは……」

謙一は突然笑い出した。

「……なかなかしっかりした男だと思っていたら、やっぱりそうだったよ」

「えっ!」

「そのうちに帰ってくるさ、何かおみやげでも探しに行ったんだろう」

「だって左手が、すっかりだめになっていますよ……」

「なあにあれでも、必要があれば首狩ぐらいやりかねない男だよ、……とにかく君たちは寝るんだ、寝るんだ」