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ひきょうのにちりんき
秘境の日輪旗
蘭 郁二郎
「秘境の日輪旗」少年文庫、新正堂、1942(昭和17)年9月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 页
上下の歯が寒さにがちがち鳴っているのが祥子にもわかった。
「しかし、さっきからみると、なんだか、すこし暖くなったような気がするんだけどな」
英夫は、じっさいそのような気がしていた。
「すこしうっかりしておったよ、道具をあすこにおいて来たのはいいが、磁石も時計もすっかり忘れて来てしまったんだ」
「だって、ここの中心は、磁石も時計も役に立たないかも知れませんよ」
「それもそうだな、どこへ行くか、行くところまで行ってみるんだな」
謙一が、のんきそうにいった。
洞窟がいくらか狭くなったらしく、話し声がわんわん弾ねかえって聞えた。
英夫も、祥子もいつの間にかつかれて眠っていた。
「おい、英夫! 祥子さん!」
謙一の声で目をさまして見ると、どこからか、ほんのかすかだが、明りがもれているような気がした。
二人とも額にうすく汗ばんでいた。――いつの間にこんなに暑くなったのだろう!
「いい気持で眠っていたらしいな」
「なんだか明りがさして来るようですね、それに、流れがすっかり止まってしまったじゃありませんか」
「洞窟の行きづまりに来たらしいぞ」
「ずいぶん暑いようだわ、いつの間にこんなに暑くなってしまったのかしら」