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ひきょうのにちりんき

秘境の日輪旗

蘭 郁二郎

「秘境の日輪旗」少年文庫、新正堂、1942(昭和17)年9月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 页

青空文庫

「おい、僕にはくれんのか」

眠っていると思った大尉が、いつの間にか目を覚していた。

「なあんだ、眠っているのだとばかり思っていましたよ」

新聞社の人が、箱を差し出しながらいうと、

「うまいもののことなら、眠っていたって目を覚すさ……」

さっそく一つ頬ばって、

「ふうん、これは上等だ、こんなものをどこで手に入れたんだい、東京にはこんなうまい菓子がないはずだぞ、香港やマニラのイギリス人、アメリカ人は、うまいものをふんだんに持っておったそうだがね」

「冗談じゃあありませんよ、友人どもが一つ一つ集めて餞別にくれたんですよ……しかし、シンガポールのイギリス人も食料品をしこたまたくわえておったそうですね、やつらは、贅沢をしているからいざとなると参ってしまうんだ」

「おごる平家は久しからずさ」

「おごる米・英久しからず……」

大尉は何かを思い出したらしく、口をつぐんだ。

飛行機は福岡でしばらく機翼を休めると、こんどは台北に向った。

英夫は、さっき考えついたことを聞いてみたかったけれど、そのうちに大尉は、膝の上に地図や複雑な図面を並べて、何か調べものをはじめてしまったので、だまって窓から外をながめていた。