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ひきょうのにちりんき
秘境の日輪旗
蘭 郁二郎
「秘境の日輪旗」少年文庫、新正堂、1942(昭和17)年9月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 页
「だって、あたし、お金がないんですもの……上海の趙さんのお友達が、それで、御親切につれて来て下さったの」
「ふん、御親切にねえ……ほっほっほ、だけどあたしなら船艙へなんかかくれて行かなくったって、ちゃんと送ってあげるんだがね……どう、お前さん、あたしの世話じゃあお気に召さないかい」
「えっ! 本当ですか、おばさん」
大きな肉を頬ばったばかりの趙が、あわてて手を振りながら、
「おいおい姐御、余計なことをいっちゃあ困るなあ、せっかくひと芝居……おっと、あっしが送ってやることに、親分も承知して下さったのに、ぶちこわしをされちゃあかなわねえよ」
「何もお前さんの仕事の邪魔をしようってわけじゃないけど、この子のはきはきした気性が気に入ったから、ちょっといって見ただけさ、あたしの方でもほしくなってねえ、ほっほっほ」
「とんでもねえ、ここまで連れて来るんだって容易じゃあねえんだ、姐御に連れて行かれちゃあ虻蜂とらずだ」
「お黙り! あたしがやるのは、お前さんのようなケチな仕事じゃないからいうのさ」
「なんだって、あっしの仕事が小せえとでもいうのかね、姐御……」
今にもつかみかかりそうな、趙の剣幕だった。