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くいどうらく

食道楽

村井 弦斎

秋の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,435 字 · 329 页

青空文庫

僕の知っている看護婦は近頃料理書を買い込んで自分で料理法を研究している。しかしまだ世間には料理書の一冊も持っていないというような冷淡な看護婦がないとも限るまい。僕は看護婦と医者に最も料理智識の必要な事を認めるね」小山「アハハ今の世にそんな事を言ってもまだ急に行われんよ。看護婦どころか大切な病人を預かる病院へ行って患者に与える食物を検査してみ給え、実に言語同断なものだぜ。二、三の病院を除くの外大概は病人の食物を賄方任せにしてある。医者が不消化物を厳禁するかと思うと看護婦が賄方から不消化物の山盛を病人の枕元へ運んで来るという有様だ。或る病院では各日の朝生玉子を二つずつ膳に添える。しかるに大概は腐っている玉子だ。患者もそれを知っていて滅多に食べない。割ってもそのまま皿へ入れて下げてやる。すると昼飯か晩飯に必ずそれが玉子焼かオムレツに変化するそうだ。現に僕の知っている玉子屋がそういった、病院では何でも廉い玉子玉子と言って直段さえ廉ければ上海玉でも腐りかかった玉子でも何でもお買いなさると。全く実際だよ。外の病院までが皆なその通りでもあるまいが今の世の病院は随分患者に不親切な方が多いね」