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くいどうらく

食道楽

村井 弦斎

秋の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,435 字 · 329 页

青空文庫

これというのも学校の力が女の品性を薫陶するに足りないで注入された智識はかえって自分の我儘を弁護する材料になるのだ。といって学校教育を受けるなとは言わない。ただ世人が学校にさえ遣っておけば娘も息子も立派な人間になれると思うのが大間違いだ。人の品性は学校教育よりもむしろ家庭教育に感化される。家庭教育を怠っておいて学校が子供を悪くするように思うのも間違っている。学校では幾十百人の生徒を同じように教育するものだから一々一人一人の品性を陶冶する力はない。家庭では一人一人に対して充分の薫育を施こす事が出来る。家庭で充分に品性を養って学校ではただ物の仕上をしてもらう位に心得ていなければならん。仕上の職人がいくら上手でも一度に沢山の細工物を仕上げる時は一々その細工物の不完全な点を直していられない。イヤいられないのではない、直す力がないのだ。四角に削った木地を塗物屋へ持って行って円い盆に仕上ろと言ってもとても出来ない。しかるに世人は自分の家庭で子供を四角に育てておいて学校がナゼ円くしてくれないと不平を言う。こんな無理な事はない。学校の方でも今までは四角なものを円くするというような法螺を吹ていたものだ。