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くいどうらく
食道楽
村井 弦斎
秋の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,435 字 · 329 页
嘘だと思うなら一走り往って覗いて見さっせい、満さんとあの娘っ子とがふざけた真似して遊んでいるだ」とたき付ける言葉の仰山なるにお代嬢はムラムラと顔の色変りて額より二本の角の生んばかり「あんだと、満さんがあの娘っ子とふざけていると。迎いにも往ねいで埒もねいこんだ。どうして遣べい」下女「あの家へ怒鳴り込で満さんを引張て来さっせい」お代「そうでもしなけりゃこの腹が癒えねいだ。和女も一緒に来さっせい」と怒りのあまりに家の内を空虚となし、下女とともに中川家の前に赴きて窃に中の様子を窺う。なるほど大原は食卓の前に坐して今日の用事も忘れたる如く楽しげに食事をなして頻にお登和嬢と何事をか語らう様子。お代は腹立たしさに躍り込んで大原にしがみ付かんと思いしが外に立派なる老人の客あり、若き娘もその席に見ゆるとて心に幾分か憚る処あり。ともかくも大原が為さん様を見ばやとて身を潜めて窺っている。家の内には大原がさせる大敵のあらんとも知らず、心尽しの御馳走に感服して声も平生より高調子に「お登和さん、実に実に今日のお手際には驚き入りました。何処へ往っても再びこんな御馳走を食べる事が出来ません。