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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁
十
十
幸福な月日は、滑るように過ぎ去った。新吉は結婚後一層家業に精が出た。その働きぶりには以前に比して、いくらか用意とか思慮とかいう余裕が出来て来た。小僧を使うこと、仕入や得意を作ることも巧みになった。体を動かすことが、比較的少くなった代りに、多く頭脳を使うような傾きもあった。
けれど、お作は何の役にも立たなかった。気立てが優しいのと、起居がしとやかなのと、物質上の欲望が少いのと、ただそれだけがこの女の長所だということが、いよいよ明らかになって来た。新吉が出てしまうと、お作は良人にいいつかったことのほか、何の気働きも機転も利かすことが出来なかった。酒の割法が間違ったり、高い醤油を安く売ることなどはめずらしくなかった。帳面の調べや、得意先の様子なども、一向に呑み込めなかった。呑み込もうとする気合いも見えなかった。
そんなことがいくたびも重なると、新吉はぷりぷりして怒った。
「此奴はよっぽど間抜けだな。商人の内儀さんが、そんなこッてどうするんだ。三度三度の飯をどこへ食ってやがんだ。」
優しい新吉の口からこういう言葉が出るようになった。
お作は赤い顔をして、ただニヤニヤと笑っている。