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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁
三十九
そして春の支度に、ちょいちょい外へ買物に出かけた。笹村も一緒に出かけて、瀬戸物などを提げて帰ることもあった。晦日になると、狭い部屋のなかには鏡餅や飾り藁のようなものが一杯に散らかって、お銀の下駄の音が夜おそくまで家を出たり入ったりしていた。母親も台所でいそいそ働いていた。神棚には新しい注連が張られて燈明が赤々と照っていた。
笹村は余所の騒ぎを見せられているような気がしないでもなかった。そして、それを引っ掻き廻さなくてはいられなかった。
「そんな大きな鏡餅を何にするんだ。」
笹村はふと頭が曇って来ると、得意になって二人のしていることに、片端から非をつけずにはいられなかった。
三十九
正月は淋しく過ぎた。気むずかしい笹村の部屋へは、しょうことなしに小さい方を据えた鏡餅の側に、貧相な鉢植えの梅の花弁が干からびて、机の傍は相変らず淋しかった。笹村は大阪にぶらぶら遊んでいた一昨年の今ごろのことが時々思い出された。そこでは新調のインバネスなどを着込んで動きのとれないような道頓堀のあたりを、毎日一人で歩いた。そして芝居や寄席や飲食店のような人いきれのなかへ慕い寄って行った。