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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁
十三
十時ごろの下宿は、どの部屋もどの部屋もシンとしていた。置時計の音などが裏からかちかち聞えて、たまに人のいるような部屋には、書物の頁をまくる音が洩れ聞えた。
お庄は逃げるように階下へ降りて行くと、重苦しく呼吸が塞るようであった。
お庄は冬の淋しい障子際に坐って、また縫物を取りあげた。冷たい赭い畳に、蝿の羽が弱々しく冬の薄日に光っていた。
十三
横浜の店をしまって、一家の人たちがまた東京へ舞い戻って来るまでには、お庄も二、三度その家へ行ってみた。
家は山手の場末に近い方で、色の褪せたような店には、品物がいくらも並んでいなかった。低い軒に青い暖簾がかかって、淋しい日影に曝された硝子のなかに、莫大小のシャツや靴足袋、エップルのような類が、手薄く並べられてあった。
飴屋の太鼓の周りに寄っている近所の鍛冶屋や古着屋の子供のなかに哀れなような弟たちの姿をお庄は見出した。弟たちは、もうここらの色に昵んで、目の色まで鈍いように思えた。
「正ちゃん正ちゃん。」と、お庄が手招ぎすると、一番大きい方の正雄は、姉の顔をじっと見返ったきり、やはりそこに突っ立っていた。
上って行くと、荒れたような家の空気が、お庄の胸にもしみじみ感ぜられた。