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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《日本の文学 9 徳田秋声(一)(あらじょたい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 頁

青空文庫

事務員が、日当りの悪い三畳の室に、薄い蒲団に包まって、まだ寝ているうちに、叔父は朝飯の箸も取らずに、蒼い顔をして出かけて行った。

長いあいだ少し積んで来た貯金を提げて仲間に加わって来た中学の教師が、二階で昨夜遅くまで、叔父と何やら争論めいた口を利き合っていたことが、お庄母子も下で聞いていて気にかかった。後では一緒に碁など打って、平常のような調子で別れたが、叔父の顔色はよくなかった。二人は事務員に帳簿を持ってこさして、長いあいだ細かしいことを話し合っていた。

「あの人は、もう手を退きたいとでも言うだか。」

ランプの下で、白足袋を綴くっていた母親は、手の届かぬ背の痒いところを揺りながら訊いた。

叔父はお庄の退いた火鉢の前の蒲団に坐って、莨を喫した。

「なあにそうでもない。あの男にとっては、大切な金だでやっぱり気を揉むだ。」

「金を返せという話にでも来たろう。」

「それほど大した金でもない。」叔父は欠をしながら言っていた。

お庄は剛愎なような叔父の顔を、傍からまじまじ見ていた。この会社の崩れかかっていることは、あれほど毎日集まって来た人が、にわかに足踏みをしなくなったことだけでも解ると思った。