Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

Read 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 231,525 characters · 463 screens

Aozora Bunko

三

「あなたも、武蔵さんを憎みますか」

「憎むとも。わしが領主であっても、断乎として、彼を厳科に処し、四民の見せしめに、八ツ裂きにせずにはおかない。彼に、地を潜る術があれば、草の根を掻きわけても、引ッ捕えて磔刑にかける。多寡の知れた一人の武蔵をなどと、寛大にしておいたら、領下の紀綱がゆるむというものだ。まして、今のような乱世には」

「沢庵さんは、私にはやさしいけれど、案外、肚の中はきついんですね」

「きついとも、わしはその公明正大な厳罰と明賞を行おうとする者だ。その権力をあずかって、ここへ来ている」

「……オヤ!」

お通は、びくりとしたように焚火のそばから立った。

「何か、今、彼方の樹の中で、ガサッと跫音がしやしませんか?」

三

「ナニ、跫音が? ……」

と沢庵もつり込まれて耳を澄ましたが、にわかに大声で、

「あははは、猿だ。猿だ。……アレ見い、親子猿が、木の枝を渡ってゆく」

ほっとしたように、お通は、

「……あ。びっくりした」

呟いて、坐り直した。

焚火の焔を見つめて、それから半刻も一刻も――夜の更けゆくままに、二人は、黙り合っていた。

消えかけて来た焚火へ、沢庵は、枯れ木を折って加えながら、