Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 231,525 characters · 463 screens
四
――藤次どの、唄たのむ」
「よしよし、皆も唄え」
箸で皿をたたく、火ばしで火桶のふちをたたく。
柴垣、柴垣
しばがき、越えて
雪のふり袖
ちらと見た
振袖、雪の振袖
チラと見た
わっと、拍手にくずれて引ッ込む。すぐ妓たちが、鳴物打って、唱歌する。
きのう見し人
今日はなし
きょう見る人も
あすはなし
あすとも知らぬ我なれど
きょうは人こそ恋しけれ
片隅では、大きな器で、
「飲めんのか、こればしの酒が」
「あやまる」
「武士たるものが」
「何を。じゃあ、俺が飲んだら、貴様も飲むか」
「見事によこせ」
牛のように飲むことをもって酒飲みの本領と心得ている徒輩が、口端から、しずくをこぼしてまで我慢して、飲みくらをしている。
やがて、嘔吐をつく奴がいる。目をすえて、飲み仲間をジロジロ睨めまわしている奴がある、またふだんの慢心に火をそそいで、あるものは、
「京八流のわが吉岡先生をのぞいて、天下に、剣のわかる人間が一匹でもいるか。いたらば、拙者が先に、お目にかかりたいもんだ。……ゲ、げーい」
四
すると、清十郎を挟んで、その隣に、同じく、これも食べ酔って、シャックリばかりしていた男が、笑いだした。
「若先生がいると思って、見えすいたおべッかをいう奴だ。