Japanese reading practice

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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

Read 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 231,525 characters · 463 screens

Aozora Bunko

五

いきなり窓ごしに彼女の手を強く握って、

「そちにも、いろいろ世話になったが、藩からお召状が来て、急に姫路へもどらねばならぬことになった」

「ま、それは……」

手をすくめたが、どじょう髯はなお固く握って、

「御用は、今度の事件が聞えて、それについてのお取糺しらしい。武蔵の首級さえ取れば、わしの面目は立派に立ち、言い開きもつくのじゃが、沢庵坊主め、何といっても意地を曲げて渡しおらぬ。……だが、そなただけは、こっちの味方じゃろうな。……この手紙、後でよい、人のおらぬ所で、読んでくれい」

何か、手へ掴ませると、どじょう髯の影は、あたふたと、麓のほうへ急ぎ足にかくれた。

五

手紙だけではない、何か、重い物がそれにはつつんである。

どじょう髯の野心は彼女にもよく分っていた。不気味であったが、怖々、開けてみると、眩ゆい山吹色の慶長大判が一枚。

そして、手紙には、

言葉のうえにても申し候通り、この数日以内に、武蔵が首級を打って密かに、姫路の城下まで、急ぎお越し候らえ。

さなくとも此方の意中は、すでにお許も御ぞん知に候うべし、身不肖なれど、池田侯の家中にて、青木丹左衛門と申せば千石取りの武士にて、知らぬは無之候。