Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

Read 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 231,525 characters · 463 screens

Aozora Bunko

三

「へ?」

おやじは、鍋の蓋を取って覗きながら、

「まだ来ないぞ、あいつまた、どこぞで道ぐさしているのかも知れぬ」

ぶつぶついいながら、やがて、土間の穿物へ足をおろしかけると、

「爺さんッ、持って来たよ」

「何をしているのだ、旦那様が待っているのに」

「だってネ、おらが、酒を取りにゆくと、店にもお客があったんだもの。――その酔っぱらいがね、また、おらをつかまえて、執こくいろんなことを訊くんだ」

「どんなことを」

「宮本さんのことだよ」

「また、くだらぬお喋舌りをしたのだろう」

「おらが喋舌らなくても、この界隈でおとといの清水寺のことを知らない者はないぜ。――隣のおかみさんも前の漆屋の娘も、あの日お詣りに行ってたから、小父さんが、大勢の駕かきに囲まれて難儀をしたのを、みんな見ていたんだよ」

三

武蔵は黙然と炉のまえに、膝をかかえていたが、頼むように――

「小僧、もうその話は、やめにせい」

眼ざとく、その顔いろを覚って、城太郎は武蔵からいわれる先に、

「おじさん、今夜は遊んでいってもいいだろ?」

と、足を洗いにかかる。

「うム。家はよいのか」

「あ、店はいいの」

「じゃあ、おじさんと一緒に、御飯でもお喰べ」