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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

Read 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 231,525 characters · 463 screens

Aozora Bunko

四

「ようこそ」

と挨拶の後、

「それがしは、馬廻り役木村助九郎」

「拙者は、納戸方村田与三」

「出淵孫兵衛でござる」

と順々に名乗り合った。

四

酒が出る。

古風な高坏に、とろりと粘るような手造りの地酒。肴は、めいめいの前の木皿へ取り分けられてある。

「お客殿、こんな山家のことゆえ、何もないのです。ただ、寛いでどうぞ」

「ささ、遠慮なく」

「お膝を」

四名の主人側は、一人の客に対して飽くまでいんぎんであって、また飽くまで打ち解けて見せる。

武蔵は酒はたしなまない。嫌いなのではなく、まだ酒の味というものが分らないのである。

しかし、今夜は、

「頂戴する」

めずらしく杯を取って舐めてみた。まずいとは思わないが、格別にも感じない。

「おつよいと見える」

木村助九郎が、瓶子を向ける。席が隣なのでぽつぽつ話しかけるのであった。

「貴君から先日お訊ねのあった芍薬の枝ですな。あれは実は、当家の大殿がお手ずから切ったものだそうです」

「道理で、お見事なわけ」

と、武蔵は膝を打った。

「――しかしですな」

と、助九郎は膝をすすめ、

「どうして、あんな柔軟な細枝の切り口を見て、非凡な切り手ということが貴君には分りましたか。