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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

Read 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 231,525 characters · 463 screens

Aozora Bunko

毒茸

一

あんた、幾歳?」

「十五」

「十五? 小さいな」

「大きなお世話」

「お父さんは」

「いないの」

「稼業は」

「うちの職業のこと?」

「ウム」

「もぐさ屋」

「なるほど、灸の艾は、この土地の名産だっけな」

「伊吹の蓬を、春に刈って、夏に干して、秋から冬にもぐさにして、それから垂井の宿場で、土産物にして売るのです」

「そうか……艾作りなら、女でも出来るわけだな」

「それだけ? 用事は」

「いや、まだ。……朱実さん」

「なアに」

「この間の晩――俺たちがここの家へ初めて訪ねて来た晩さ――。まだ死骸がたくさん転がっている戦の跡を歩いて、朱実ちゃんはいったい何していたのだい。それが聞きたいのさ」

「知らないッ」

ぴしゃっと戸をしめると、朱実は、袂の鈴を振り鳴らして、母屋のほうへ駈け去った。

毒茸

一

五尺六、七寸はあるだろう、武蔵は背がすぐれて高かった、よく駈ける駿馬のようである。脛も腕も伸々としていて、唇が朱い、眉が濃い、そしてその眉も必要以上に長く、きりっと眼じりを越えていた。

――豊年童子や。

郷里の作州宮本村の者は、彼の少年の頃には、よくそういってからかった。眼鼻だちも手足も、人なみはずれて寸法が大きいので、よくよく豊年に生まれた児だろうというのである。