Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

Read 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 231,525 characters · 463 screens

Aozora Bunko

三

「怪しいものでござりますぞ」

囃したてると、

「いいえ、いいえ」

妓は、白粉の顔を格子へつけて、

「もし、お弟子さん方、それくらいなことがわからないでは客商売はできませんよ」

「ほ。えらく、広言を吐くの――。ではどこで、それがわかったか」

「黒茶のお羽織は、四条の道場にかようお武家衆好み。この遊里まで、吉岡染というて、流行っているではございませんか」

「でも、吉岡染は、誰も着る、若先生だけとは限らぬ」

「けれど、ご紋が三つおだまき」

「あ、これはいかん」

清十郎が、自分の紋を見ているまに、格子の中の白い手は、その袂をつかまえていた。

三

「顔をかくして、紋かくさずだ。参った! 参った!」

藤次は清十郎へ、

「若先生、こうなっては、ぜひないこと、上がっておやりなさるほか、策はありますまい」

「どうなとせい。それより、はやくわしのこの袂をはなさせてくれ」

当惑顔をすると、

「妓、上がってやると仰っしゃるから、はなせ」

「ほんとに」

妓は、清十郎の袂をはなした。

どやどやと、連中は、そこの暖簾をわけて入った。

ここも、急ごしらえの安普請である。落ちつくに堪えない部屋に、俗悪な絵だの花だのを、無智に飾りたててある。