Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

Read 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 231,525 characters · 463 screens

Aozora Bunko

三

三

「……だめか」

死者の枕元をかこんだ同門の者たちの顔は、一様に蒼くにごって、重くるしい息をのんだ。

そこへ、あわただしい跫音が、玄関から道場へ通り、道場から奥へ入って来た。

祇園藤次を連れた吉岡清十郎であった。――

二人とも、水から上がって来たような醒めた顔いろを湛えていた。

「どうしたのだ! この態は」

藤次は吉岡家の用人格でもあり、また道場では古参の先輩でもあった。従ってその言葉つきは場合にかまわず、いつも権柄であった。

死人の枕元で、涙ぐんでいた多感らしい門人が、途端に憤ッとした眼を上げて、

「何をしていたとはあなたがたのことだ。若先生を誘惑いあるいて、馬鹿も程にしたがよいッ」

「何だと」

「拳法先生のご在世中には、一日たりとも、こんな日はなかったんだぞ!」

「たまたまのお気ばらしに、歌舞伎へお出でになったくらいのことが、なんで悪いか。若先生をここにおいて、なんだその口は。出過ぎ者め」

「女歌舞伎は、前の晩から泊らなければ行けないのか。拳法先生のお位牌が、奥の仏間で、泣いてござるわっ」

「こいつ、いわしておけば」

その二人をなだめて別室へ分けるために、そこはしばらくがやがやしていた。