Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 231,525 characters · 463 screens
「おばさん、笛吹くの?」
と訊いた。
だが、若い女に対して、おばさんと呼んで、この間、よもぎの寮の娘に怒られたことを城太郎は思い出したのだろう、またあわてて、
「お女中さん、なんという名?」
突拍子もなく違った問題を、しかし、なんのこだわりもなく、急に訊き出すのである。
旅の若い女は、
「ホホホホホ」
城太郎には答えないで、彼の頭越しに顎髯の侍のほうを見て笑った。
熊のような髯のあるその武家は、白い丈夫そうな歯を見せて、これは大きく哄笑した。
「このチビめ、隅には置けんわい。――人の名を問う時は、自分の名から申すのが礼儀じゃ」
「おらは城太郎」
「ホホホ」
「狡いな、俺にだけ名のらせておいて。――そうだ、お武家さんがいわないからだ」
「わしか」
と、これも困った顔をして、
「庄田」――といった。
「庄田さんか。――下の名は」
「名は勘弁せい」
「こんどは、お女中さんの番だ、男が二人まで名をいったのに、いわなければ、礼儀に欠けるぜ」
「わたくしは、お通と申します」
「お通様か」
と、それで気が済んだのかと思うと、城太郎は口を休めずに、
「なんだって、笛なんか帯に差して歩いているんだね」