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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 231,525 characters · 463 screens
三
「庄田さんて――柳生様の家来だって」
「どうして知っているのか」
「いつか、奈良へ来る途中、いろいろ親切にしてくれたから」
「ふム」
「ほかに、何とかいう女の人とも道連れになって、木津川渡舟までおらと三人、一しょに歩いて来たのさ」
小柳生城の外形と、柳生谷の土地がらを一巡見て歩いて、武蔵はやがて、
「帰ろう」
と、元の方角へ足を向ける。
旅籠は、たった一軒だが、大きなのがあった。伊賀街道に当っているし、浄瑠璃寺や笠置寺へゆく人たちも泊るので、夕方になると、そこの入口の立樹や、廂の下には、必ず十頭くらいの荷駄馬がつながれ、夥しい米を炊ぐため、米の磨ぎ水が前の流れを白く濁していた。
「旦那はん、どこへ行きなされた?」
部屋へ入ると、紺の筒袖に、山袴を穿き、帯だけが赤いので、これは女の子だと分る女の子が、突っ立ったままで、
「すぐ風呂に入りなされ」
という。
城太郎は、ちょうどよい年頃の友達を見つけたように、
「おめえ、何てえ名だい」
「知らんが」
「阿呆、自分の名を」
「小茶ってんだよ」
「変な名」
「大きにお世話」
小茶が、打つと、
「打ったな」
武蔵は廊下から振向いて、
「おい、小茶ちゃん、風呂場はどこだ。