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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 231,525 characters · 463 screens
そのほうが、吾々には、むしろ怪訝しいのですが」
「…………」
武蔵は、小首をかしげて、答えに窮するもののように黙っていたが、やがて、
「左様でござろうか」と、反問した。
「そうですとも」
庄田、出淵、村田の三名も、異口同音に、
「吾々には、分らない。……やはり非凡は非凡を識るというものか。そこのところを、後学のために、こよいは一つ説明していただきたいと思うのですが」
武蔵は、また一つ杯をふくみ、
「恐縮です」
「いや、ご謙遜なさらずに」
「謙遜ではござらぬ。有り態に申して、ただ、そう感じたというだけに過ぎませぬ」
「その感じとは?」
柳生家の四高弟は、ここを追及して、武蔵の人間を試そうとするもののようであった。最初、一瞥したとたんに、四高弟はまず、武蔵の若年なのをちょっと意外としたらしい。次には、その逞しい骨格に目がついた。眼ざしや身ごなしにも弛みがないと感服した。
けれど、武蔵が酒を舐めると、その杯の持ちようや箸のさばき、何かにつけ、粗野が目について、
(ははあ、やはり野人だ)
つい書生扱いになり、従って、幾分軽んじてくる傾きがあった。
たった三杯か四杯かさねただけなのに、武蔵の顔は、銅を焼いたように火てりだし、始末に困るように、時々手を当てた。