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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

Read 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 231,525 characters · 463 screens

Aozora Bunko

庄田は、畳みかけて、

「大殿へ会って、何とする気じゃ」

「それがしは、兵法修行中の若輩者、生涯の心得に、柳生流の大祖より一手の教えを乞わんためでござる」

「しからばなぜ、順序をふんで、我々にそう申し出ないか」

「大祖は、一切人と会わず、また修行者へは、授業をせぬと承った」

「勿論」

「さすれば、試合を挑むよりほか道はあるまい、試合を挑んでも、容易に余生の安廬より起って出ぬに相違ない。――それゆえ拙者は、この一城を相手にとって、まず、合戦を申しこむ」

「なに、合戦を?」

あきれた顔つきで四高弟はそう反問した。そして、武蔵の眼いろを見直した。――こいつ狂人ではあるまいかと。

相手の者に、両腕をあずけたまま武蔵は空へ眼を上げていた。何か、バタバタと闇が鳴ったからである。

「? ……」

四名も眼をあげた。その一瞬、笠置山の闇から城内の籾蔵の屋根のあたりへ、一羽の鷲が、星をかすめて飛び降りた。

心火

一

合戦といっては、言葉が大げさにひびくが、武蔵が今の自分の気持をいい現わすには、そういってもなおいい足りないほどであった。

技の末や、単なる小手先の試合では決してない。そんな生ぬるい形式を、武蔵は求めているのでもない。