Japanese reading practice

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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

Read 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 231,525 characters · 463 screens

Aozora Bunko

「あの、悪蔵め……、ことによると、又八だけを死なして、おのれは、臆病かぜに吹かれて、ただ一人のめのめと帰って来たのかも知れぬ」

「まさか、そんなことはないでしょう。そうならばそうといって、何か遺物でも持って来てくださるでしょうに」

「なんのいの」

老母は、つよく、顔を振った。

「彼奴が、そんなしおらしい男かよ。又八は、悪い友達を持ちおったわ」

「ばば様」

「なんじゃ?」

「私の考えでは、きっと、お吟様の邸へゆけば、今夜はそこに武蔵さんもいるだろうと思いますが」

「姉弟じゃもの、それやいるだろう」

「これから、ばば様と二人して、訪ねて行ってみましょうか」

「あの姉も姉、自分の弟が、わしがとこの息子を戦に連れ出して行ったのを承知しながら、その後、見舞にも来ねば、武蔵がもどったと知らせても来おらぬ。何も、わしの方から出向くすじはないわ。新免から来るのが当りまえじゃ」

「でも、こんな場合ですし、一刻もはやく武蔵さんに会って、細かい様子も聞きとうございます。あちらへ参った上の挨拶はわたしがいたしますから、おばば様もご一緒に来てくださいませ」

お杉は渋々、承知した。

そのくせ息子の安否を知りたいことは、お通にも劣らないほどだった。