Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 231,525 characters · 463 screens
それは燭台の向う側によけいな人間が一人いて、ぺたんと盲人のように猫背に坐り、膝を机に書物を読んでいるからである。
沢庵なのだ。どじょう髯の大将は、この寺の納所と思っているらしく、遂に、
「オイ、こら」
と、顎を指していった。しかし沢庵は顔を上げようともしないので、お通がそっと注意すると、
「え。わしを?」
見まわすのを――どじょう髯は、大ふうに、
「コラ納所。その方には用事もない。退がっておれ」
「イエ、結構でございます」
「酒のそばで、書物など読んでいられては、酒が不味くていかん。立てっ」
「書物はもう伏せました」
「眼ざわりじゃ!」
「では、お通さん、書物を部屋の外へ出しておくれ」
「書物がではない、その方という者が、酒の座に、不景色でいかんというのだ」
「困りましたな。悟空尊者のように、煙になったり、虫に化けて、膳のすみに止まっているわけにもゆかず……」
「退がらんかっ! ぶ、ぶ礼な奴だ」
遂に、怒り出すと、
「はい」
と、一応畏まって、沢庵はお通の手を取った。
「お客様は、独りが好きだと仰せられる。孤独を愛す、それ君子の心境だ。……さ、お邪魔しては悪い、あちらへ退がろう」