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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

Read 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 231,525 characters · 463 screens

Aozora Bunko

――そのうちにはもしかしたら自分の探し歩いている――宮本武蔵政名――の名があるかも知れない。もしあったらどんなに欣しいか。

「では、おことばに甘えて、お供いたしまする」

急に明るくいうと、

「え、来てくれるとか、それは辱い」

喜左衛門は欣んで、

「そう決まれば、女子の足では夜にかけても、小柳生まではちと無理、お通どの、馬に乗れるか」

「はい、厭いませぬ」

喜左衛門は軒を出て、宇治橋の袂のほうへ手をあげた。そこに屯していた馬方が飛んで来る。お通だけを乗せて、喜左衛門は歩いた。

すると茶屋の裏山へ上っていた城太郎が見つけて、

「もう行くのかあいっ」

「おお出かけるぞ」

「お待ちようっ」

宇治橋の上で、城太郎は追いついた。何を見ていたのかと喜左衛門が訊くと、丘の林の中に、大勢の大人が集まって、何か知らないが面白い遊び事をしていたから見ていたのだという。

馬子は笑って、

「旦那、そいつあ牢人が集まって、博奕を開帳しているんでさ。――食えねえ牢人が旅の者を引っ張りあげては、裸にして追っ払うんだから凄うがすぜ」

と、いった。

六

馬の背には、市女笠の麗人、城太郎と髯の庄田喜左衛門とが、その両側に歩み、前には日の永い顔をして馬子が行く。