Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 231,525 characters · 463 screens
「おまえ達も戻れ」
日観が命令を下すと、槍を並べている僧列は、黙礼して野を歩みだした。それを連れて、胤舜も、師と武蔵へ、あいさつを残して帰って行った。
人が減ると、
ぎゃあアぎゃあア!
鴉の群れは、急に厚顔ましく地上へ降りて来て、死骸へたかり、梅酢を浴びたようになって、驚喜の翼を搏っている。
「うるさい奴」
日観はつぶやきながら、武蔵のそばへ来て、気軽にいった。
「いつぞやは失礼」
「あっ、その折は……」
あわてて彼は両手をつかえた。そうせずにはいられなかった。
「お手をお上げ。野原の中で、そう慇懃なのもおかしい」
「はい」
「どうじゃな、今はすこし、勉強になったか」
「仔細、お聞かせ下さいませ。どうして、こういうお計らいを?」
「もっともだ。実はの」
と、日観が話すには――
「今帰った役人たちは、奈良奉行大久保長安の与力衆でな、まだ奉行も新任、あの衆も土地に馴れん。そこをつけ込んで、悪い牢人どもが、押し借り、強盗賭試合、ゆすり、女隠し、後家見舞、ろくなことはせん。奉行も手をやいていたものだ。――山添団八、野洲川安兵衛など、あの連中十四、五がそのグレ牢人の中心と目されていた」