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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 231,525 characters · 463 screens
それは、七寸ばかりの芍薬の切枝だった。
「…………」
黙然と、喜左衛門は、その両方の切り口を見くらべていたが、しきりと、小首をかしげるのみで、武蔵の書中にあることばの意味が、十分に、彼には解せないらしいのである。
武蔵の書面には、計らずも、宿の少女から芍薬の一枝をもらったこと。それが御城内のものであるということ。――次に、切り口を見て非凡なお方の切ったものと拝察したということ。
そう次第を書いて来て、
(花を挿け、その神韻を感じるにつけ、どなたがあれをお切りになったか、どうしても知りたい気がする。甚だ、つかぬことをお訊ね申すようであるが、御家中の誰方であるや、おさしつかえなくば、使いの童に、一筆お持たせねがいたい)
自分が、武者修行の者とも書いてない。試合の希望もいっていない。それだけの文意であった。
(ふしぎなことをいってくる)
喜左衛門は、そう思って、一体どう切り口が違っているかを、まず審さな眼で検めてみたが、どっちがどう先に切ってあるのか、どこに相違があるのか、見出せないのだ。
「村田」
その手紙と、切枝とを、彼は道場の内へ持って入って、
「これを見ろ」