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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 231,525 characters · 463 screens
「あっ」
喜左衛門が、武蔵の顔を見た。
武蔵もまた、
「あっ……」
と、微かな声を洩らし、同時に、膝を打っていった。
「死んだ」
すると、喜左衛門も共に、
「太郎め、殺られおった」
といった。
二人の直感が一致したのである。喜左衛門はもう居堪まらないで、
「解せぬこと」
と、席を立った。
武蔵は何か思い当ることがあるもののように、
「私の連れて参った城太郎という僕童は、そこに控えておりましょうか」
と、新陰堂の表の部屋にいる小侍に向ってたずねた。
そこらを捜しているらしく、しばらくたってから、小侍の返辞が聞えた。
「お下僕は、見えませぬが」
武蔵は、ハッとしたらしく、
「さては」
と、喜左衛門へ向い、
「ちと心懸りな儀がござる。犬の斃れておる場所へ参りたいと思いますが、ご案内下さるまいか」
「おやすいこと」
喜左衛門は、先に立って、二の丸のほうへ走った。
例の武者溜りの道場から一町ほど離れている場所だった。四、五点の松火の明りがかたまっていたのですぐ分った。先に出て行った村田も出淵もそこにいた。そのほか集まって来ていた足軽だの、宿直の者だの、番士たちだのが、真っ黒に垣をなして何か騒々いっているのだった。