Japanese reading practice

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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

Read 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 231,525 characters · 463 screens

Aozora Bunko

又八の怪訝るのはもっともだった。典馬を討ってやったことはどんなに、この母娘から欣ばれることだろうと期待していたのに、ゆうべも、朱実は手をたたいて喜んだが、お甲は、かえって不安な顔を見せた。

その不安を、今日まで持ち越して、炉ばたに沈みこんでいるのが、又八には、不平でもあるし、わけがわからない――

「なぜ。なぜだい、おばさん」

朱実の汲んでくれた渋茶をとって、又八は膝をくむ。お甲は、うすく笑った、世間を知らない若者のあらい神経を羨むように。

「――だって、又さん、辻風典馬にはまだ何百という乾児があるんだよ」

「あ、わかった。――じゃあ奴らの仕返しを、恐がっているんだな、そんな者がなんだ、俺と武蔵がおれば――」

「だめ」

軽く手を振った。

又八は、肩を盛りあげて、

「だめなことはない、あんな虫けら、幾人でも来い、それとも、おばさんは、俺たちが弱いと思っているのか」

「まだ、まだ、お前さん達は、わたしの眼から見ても、嬰ン坊だもの。典馬には、辻風黄平という弟があって、この黄平がひとり来れば、お前さん達は、束になっても敵わない」

これは又八にとって心外なる言葉であった。