Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きどうむかしがたり

綺堂むかし語り

岡本 綺堂

Lesen Sie 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 183.656 Zeichen · 363 Bildschirme

Aozora Bunko

「洋服を着て通りゃあがると、あたまから水をぶっ掛けるぞ。気をつけやあがれ。」

窓はぴっしゃり閉められた。お玉さんの顔は消えてしまった。私は物に魘われたような心持で早々に家へ帰った。その当時、わたしは毎日出勤するのに、和服を着て出ることもあれば、洋服を着て出ることもあった。お玉さんから恐ろしい宣告を受けて以来、わたしは洋服を着るのを一時見合せたが、そうばかりもゆかない事情があるので、よんどころなく洋服を着て出る場合には、なるべく足音をぬすんでお玉さんの窓の下をそっと通り抜けるようにしていた。

それからひと月ばかり経って、寒い雨の降る日であった。わたしは雨傘をかたむけてお玉さんの窓ぎわを通ると、さながら待ち設けていたかのように、窓が不意に明いたかと思うと、柄杓の水がわたしの傘の上にざぶりと降って来た。幸いに傘をかたむけていたので、さしたることも無かったが、その時わたしは和服を着ていたにも拘らず、こういう不意討ちの難に出会ったのであった。その以来、自分はもちろん、家内の者にも注意して、お玉さんの窓の下はいつも忍び足で通ることにしていた。それでも時どきに内から鋭い声で叱り付けられた。