Japanische Klassiker mit Furigana
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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
Lesen Sie 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 183.656 Zeichen · 363 Bildschirme
「馬鹿野郎。百姓。水をぶっかけるぞ。しっかりしろ。」
口で云うばかりでない、実際に水の降って来ることがたびたびあった。酒屋の小さい御用聞きなどは寒中に頭から水を浴びせられて泣いて逃げた。近所の子供などは口惜しがって、窓へ石を投げ込むのもあった。お玉さんも負けずに何か罵りながら、内から頻りに水を振りまいた。石と水との闘いが時どきにこの狭い路地のなかで演ぜられた。
そのうちにお玉さんの家は路地のそばを三尺通り切り縮められることになった。それは路地の奥の土蔵付きの家へ新しく越して来た某実業家の妾が、人力車の自由に出入りのできるだけに路地の幅をひろげて貰いたいと地主に交渉の結果、路地の入口にあるお玉さんの家をどうしても三尺ほどそぎ取らなければならないことになったのである。こういう手前勝手の要求を提出した人は、地主に対しても無論に高い地代を払うことになったに相違なかった。お玉さんの家の修繕費用も先方で全部負担すると云った。
「長左衛門さんがおいでなら、わたくしも申すこともありますが、今はもう仕様がありません。」と、徳さんは若い地主からその相談を受けた時に、存外素直に承知した。