Japanische Klassiker mit Furigana
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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
Lesen Sie 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 183.656 Zeichen · 363 Bildschirme
丁度きょうのような陰ってしめった日に出るのだそうで、わたしはまことに有難い日に来合せたのでした。
なにしろ血が止まらないのには困りました。見ているうちに左の手はぬらぬらして真紅になります。もう少しの御辛抱ですと云いながら案内者は足を早めて登って行きます。わたしもつづいて急ぎました。
路はやがて下りになったようですが、わたしはその「もう少し」というところを目的に、ただ夢中で足を早めて行きましたからよくは記憶していません。それから愛宕神社の鳥居というのが眼にはいりました。ここらから路は二筋に分かれているのを、私たちは右へ取って登りました。路はだんだんに嶮しくなって来て、岩の多いのが眼につきました。
妙義葡萄酒醸造所というのに辿り着いて、ふたりは縁台に腰をかけました。家のうしろには葡萄園があるそうですが、表構えは茶店のような作り方で、ここでは登山者に無代で梅酒というのを飲ませます。喉が渇いているので、わたしは舌鼓を打って遠慮なしに二、三杯飲みました。そのあいだに案内者は家内から藁を二、三本貰って来て、藁の節を蛭の吸い口に当てて堅く縛ってくれました。これはどこでもやることで、蛭の吸い口から流れる血はこうして止めるよりほかは無いのです。